岡田伊登子展






橋 2000年






月は笑う 2000年





浮遊する視線

梶川芳友


岡田伊登子が書く画は自由で気ままである。
アトリエを訪ねると、細長い紙が天井から吊り下げられ、そのままの状態で制作が進められている。ほんの少し力を入れると、支えのない紙は後ろへ押し流されてしまう。ふわりとした筆触はここから生まれてくるようである。

眼に見えないものにたいしてどう関わるかは、創作家にとって重要な問題である。画には言葉では表現できないなにものかがあり、それが人の心を惹きつける。言葉をすり抜けた、つかみどころのない作品には、虚と実を彷徨うふしぎな浮遊感と優しい息づかいが感じられる。

暇をみつけては日本各地を旅している岡田伊登子が、京都を題材に「春夏秋冬」を、奈良吉野の桜をテーマに「山は笑う」を描いた。
俯瞰図でありながら、この世を井戸の底から透かし見ているような視線。そこには現実の世界と内なる声との葛藤の跡が、静かな緊張感を孕みながら残っている。それは画家の心の奥に潜む批評精神でもある。
満開の花の香気に誘われて、岡田伊登子は誰も知らない場所へと降りていく。そこで独り、この世界を眺めているのかもしれない。




年譜


1949 埼玉県に生まれる。
1975 西ドイツに滞在。
1976 武蔵野美術大学造形研究科大学院修了。
1993 個展 天に掛かる橋
1995 個展 桜の森の満開の下
1996 個展 雲の梯子
1997 個展 静かなるモノ
1998 個展 天に上る水
1999 個展 ペキンサマー 橋と広場
2002 個展 笑う 雪月花そして風 岡田伊登子展








関連グッズ

笑う 雪月花そして風 岡田伊登子画文集

1,800円




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