渡辺兼人展



既視の街 1980年




既視の街 1980年




水無月の雫I 1996年




半島 1998年




孤島 2000年







不在のなかの存在

梶川芳友


私が渡辺兼人の写真を知ったのは、1980年に発表された『既視の街』という写真集であった。
渡辺兼人はこの作品で第7回木村伊兵衛賞を受賞し、選考委員の一人であった安部公房は“奇妙に過充電された光景”と評していた。以来、渡辺兼人は独自の写真論を堅持しながら、地道な創作活動を続けている。

渡辺兼人はミノルタの二眼レフ、オートコードをさげて一日約30キロ、行き先も決めず、何日も歩き続ける。そして気になる場所でシャッターを切るのである。
視線の徘徊者である彼の暗室での制作は、印画紙にもこだわり、納得するまで幾度も繰り返される。そうして写し出された都市の空間、荒涼とした自然、静かな水面など一見何気ない風景が、意識のなかに深く浸透してくるのである。

私にとってアンリ・カルティエ=ブレッソンは、まさに決定的瞬間を捉えた写真家である。渡辺兼人が最も評価する木村伊兵衛には、決定的瞬間の少し手前という魅力がある。
一方、渡辺兼人には、決定的瞬間の過ぎたあとの光景、不在のなかの存在を感じるのである。ともに生活者としての眼から、自己と他者との関係性を通して時代を写し出すという共通点があり、彼の断定的なところにも好感が持てた。私は渡辺兼人の最初の作品から現在まで、すべての作品を何必館でコレクションすることに決めたのである。
現代における視覚芸術の爛熟と多様化のなかで、渡辺兼人に「純写真」ともいうべき写真に囚われ続けている写真家の姿を観るのである。





年譜



1947 東京に生まれる。
1969 東京綜合写真専門学校卒業。
1973 「暗黒の夢想」ニコンサロン、東京
1974 「神秘の家、あるいはエルベノンの狂気」シミズ画廊、東京
1980 第7回木村伊兵衛賞受賞。
1981 「既視の街」ニコンサロン、東京
1982 「逆倒都市」ツァイト・フォト・サロン、東京
1983 「類と類型」オリンパス・ギャラリー、東京
1985 「パリ・ニューヨーク・東京」つくば写真美術館`85、つくば市
「人形 1973-1983(製作 四谷シモン)」
「ジャック・ザ・リパーに関する断片的資料1973」つくば写真美術館`85、つくば市
1986 「日本現代写真展」(バルセロナ、マドリッド、ビルバオ、バレンシア巡回)
1987 「YAMATO-TOKYO」Gスペース、東京
1988 「YAMATO-大和」ツァイト・フォト・サロン、東京
1990 「YAMATO-F」朝日ギャラリー、東京
「彷徨・写真・城市」パストレイズ・フォトギャラリー、横浜
1992 「L'ATALANTE」平永町橋ギャラリー、東京
「昭和66年 葉月」ツァイト・フォト・サロン、東京
1993 「YAMATO1987-1990」ピクチャー・フォト・スペース、大阪
1994 「神無月迄」ツァイト・フォト・サロン、東京
1996 「水無月の雫」ツァイト・フォト・サロン、東京
1998 「半島」エッグギャラリー、東京
2000 「孤島」銀座九美洞ギャラリー、東京
「島―光の暴力」エッグギャラリー、東京
2003 「渡辺兼人 写真展」何必館・京都現代美術館、京都








関連グッズ

記念出版 渡辺兼人写真集

2,600円




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