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![]() The Young Man 1999 |
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サラ・ムーンの幻影 梶川芳友 |
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サラ・ムーンとの出会いはゆるやかなものであった。
十数年前、東京で開催された二度のサラ・ムーン展は、特別な何かを感じさせるものではなかった。しかし、私の認識が一変したのは、サラ自身が監督した「アンリ・カルティエ=ブレッソン、疑問符」というドキュメンタリー映像である。この作品には私が尊敬し親しくしているブレッソンの知的で自在な世界観が、見事に表象されていた。すべてはここから始まったのである。 「予期しないものが現れる瞬間に出会うことが、もっとも重要なこと」というサラ・ムーンは、文学や絵画、そして自然からの直観的連想によって、現実ではない物語をつくり上げ、架空の情景を写真の上に表現していくのである。そして、独特のプリントは、マットペーパーにセピアを組み合わせるという、1920年代に終わった時代おくれの技法を用いている。それが彼女の作品世界をいっそう引き立たせている。 今回、何必館・京都現代美術館は、155点のサラ・ムーン作品をコレクションすることができた。そのなかには、昨年秋、私が彼女へ贈った自筆の書「象」の返礼として贈られた『STILL』という小さな写真集の、深い存在の悲しみが織り込まれた作品が、すべて含まれている。 他者の非情な視線にさらされ、被写体として、常に撮られることが日常であった彼女は、カメラがどんなに残酷になれるかもよく知っている。「光は驚きであり、失望であり、感激なのです」と語る彼女の写真は、まるで感情を持った鏡のように、現代人の孤独な内面を浮き彫りにしていく。 洗練された時空の中で、はかなく消え去ってゆくSarah Moon's Phantasmagoria(サラ・ムーンの幻影)には、不思議な既視感が漂っている。 静かに目を閉じるとサラ・ムーンのシャッターの音が聞こえる。 |
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