志村ふくみ展













1981年、東京日本橋で志村ふくみさんの個展が開かれていた。私はその会場で何点かの作品を拝見するうちに、ここにパウル・クレーがあるではないか、と思ったのである。志村さんと話していると、「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、眼に見えるようにすることである」というクレーの言葉を大事にされ、眼に見えないものの存在を確信しておられることがわかった。私は、いつか企画展をお願いしようと決めていた。

自然との対話を創造の磁場としたクレーにとって、植物は重要な創作モチーフのひとつであった。草木染の志村さんがクレーと巡り会うことは、自然の理法のような気がする。しかし、制作過程で植物の生命をいただく志村さんは、より厳粛な世界に棲んでいるといえるかもしれない。

「色彩は光の行為であり、受苦である」

ある日、志村さんは創作活動に決定的な意味を与えられたというゲーテの色彩論を切り出された。私もこの短い一行に、領域を問わず、芸術家の根源的な主題が表現されていると考え続けていたのであった。見えないものを見えるようにする光、植物の生命を醸成し再生する光。志村さんの作品は光からの贈り物であるが、それは光に奉仕する作家の精神の運動でもある。


何必館・京都現代美術館長 梶川芳友





年譜


1924 滋賀県近江八幡に生まれる。
1941 母より初めて機織りを習う。
1955 植物染料による染色を始める。
1982 群馬県立近代美術館にて「志村ふくみ展」開催。
1983 『一色一生』にて大仏次郎賞受賞。
1990 重要無形文化財保持者に認定される。
1993 『語りかける花』によりエッセイストクラブ賞受賞。
1994 滋賀県立近代美術館にて「志村ふくみ展」開催。
1996 何必館にて「志村ふくみ展 1996」開催。








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志村ふくみ 光の受苦

1,800円




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